【任意整理の体験談】リストラの事実を隠したい見栄が招いた自己破産の危機

虚栄心が弱い自分自身を誤魔化し続けた挙句の経済的破綻

見栄が招いた自業自得と最初の救いの手

地元の大学で留年を重ねた果て、ようやく就職させてもらった外資系の中堅医薬品企業からリストラ宣告を受けたのも、日々の勤務態度と自らの能力を思えば当然の事でした。元来の小心者に加えて妙なプライドだけは人一倍の私は、この事実を周囲に悟られまいと、手当たり次第のキャッシングで、それまでと変わらぬ独身貴族を気取り続けました。

行きつけのスナックで大盤振る舞いからクレジットカード決済を重ね、その請求額を埋めるべく、ノンバンク系金融業者から借入れを繰り返すばかりでした。ですがそんな金銭管理を含めて全てがルーズな性格の１人の男の、頻繁に届く督促状も、恐怖感から中身を確かめもせずに破棄してしまうような暮らしなど、世の中は許してはくれません。

遂に新たな借入先にも窮し、電話やガスが止められ始める状況に至ったタイミングで訪ねて来てくれたのは、現在暮らす町で知り合った、同い年の信頼出来る1人の知人でした。

偶然飲み屋で隣席同士になり、直ぐに意気投合した彼もまた、自身の事業の資金繰りの悪化からキャッシングを重ね、弁護士の力を借りての任意整理を経て、生活を立て直した経験者でした。私は他に縋る相手も見当たらず、この時ばかりは正直に全てを話しました。開封するのが怖くて室内に放置していた請求書を全て探し出し、それを持参して一刻も早く弁護士に相談するよう強く進言してもらえた事で、ようやく自ら招いた現実と向き合う決心がつきました。

電話の呼び出し音だけでなく、玄関に近づく誰かの足音に怯える事にも麻痺し始めていた私は、まずは彼に積もりに積もった督促状を見てもらい、現状を解説してもらうところから、債務整理の第1歩をようやく踏み出したのです。

意を決して弁護士を訪ねるまで

朧気な記憶と、中には捨ててしまったために、借入状況が確認出来ない金融業者も複数という状況に、親切な彼もさすがに呆れ顔でしたが、私には反論する資格も言葉も一切ありませんでした。ノンバンク系金融業者計5社から、最高50万円を始めとして各々限度額一杯までの借り入れている事に加え、ショッピングクレジットカードに付帯されたキャッシング機能も、詳細も確かめずに利用していました。

更に各々の延滞損害金が半端無く膨らんでいるであろう事から、少なくとも500万円は下らない債務が生じていると推察できました。故郷の年老いた母親にはとても現状報告など出来ず、子供が生まれて間もない弟にも迷惑はかけられません。ですが自己破産となれば当然、隠し通す訳には行きません。

自分でも呆れる程に虚栄心の塊だった私は、気づけば恥も外聞も無くポロポロと涙を流すばかりでした。もしかすれば犯罪を犯して逃亡生活を続けて来た犯人が、お縄を頂戴する時の心境もこんなのだろうかと、意味不明な思いが頭を過ぎった事を、今も鮮明に記憶しています。

彼自身が任意整理でお世話になった弁護士を訪ねるに際し、私の性格を十分に知る彼からは、全て正直に話す事、僅かでも思い出した事があれば漏らさず伝える事の2点を念押しされました。私も彼の誠意に少しでも応えねばと、当日弁護士と面談した際の予行演習や、下手な文字で綴った資料を準備するなど、自分なりに出来る限りの備えを整え、当日を迎えました。

普段からこれだけ真剣に仕事と対峙していれば、そしてもっと早く、素直に誰かに窮状を相談していればとの後悔に襲われましたが、当時の私には既に逃げ場も無ければ、これ以上誤魔化し続ける術も見当たりませんでした。

全幅の信頼を寄せられる弁護士との出会いからの自己破産回避

正直に伝えた遠い日の記憶から

全てを委ねた弁護士事務所から、後日届けていただいた報告内容に、私は呼吸すら忘れていました。何とも不真面目ですが、今は懐かしいテレビのドッキリ企画の主人公に祭り上げられている気分でした。作成いただいた各社からの最終的な示談金額の一覧表には、各々「聴衆額」と記載された.私が伝えた借入額と、引き直しと称される過払い金をチェックした後の「引直額」が記載されていました。

計7社中6社のそれらは殆ど差額が見られませんでしたが、1社だけ約80万円の借入額に対し、この金額を相殺から、更に約35万円の過払い金が発生がしていたのです。

私が数字に弱い事を見抜かれていたのでしょう。分かりやすく計算式を説明されながら、今後の私の決心と生活態度次第で、十分任意整理で完済可能である事を、初対面時から変わらぬソフトな口調で諭していただきました、勿論私に他の選択肢などありませんでした。

「ご実家のご家族に内緒でやり遂げられます。自己破産を急ぐ必要など全くありません」の一言に、あの日自室で零した涙とは違う「感謝と決意の涙」で、机上の資料が潤みました。

今の自身が目指す完済という人生の目標

この日を境に、確かに私は生まれ変わりました。以前であれば自分勝手な物差しを用い、この期に及んでもまだ、再就職先の看板や仕事内容に拘った事でしょう。ですが今は任意整理のゴールテープを自力で切るという、明確な人生の目標を与えていただけています。早朝は新聞配達から、昼間は事情を汲んでダブルワークを認めていただいた紙器工場で、日々汗を流しています。夕刻5時に1日の仕事が終われば、真っ直ぐ帰宅からスーパーで見切り品を調達しての自炊が待っています。

分相応肩幅相応の生活がこんなにも充実している事を、任意整理という選択肢に教わったと、今は日々感謝の毎日です。力添えくださった弁護士と、そして何より「どんな些細な事でも全て正直に相談しろ」とアドバイスを授けてくれた彼に、感謝を込めて完済の報告とお礼を届けられるまで、残り半年のところまで辿り着いています。